「漢方内科」という言葉を耳にしたことはあるけれど
- 具体的にどのような診療を行うの?
- 他の内科と何が違うの?
- 副作用とか危険じゃないの?
など、今まで馴染みがなかった場合は疑問や不安がたくさん出てきますよね。
日本の医療環境では、西洋医学が主流ですが、漢方治療は長い歴史と豊富な実績があります。
特に「なんとなく不調が続く」「病名はハッキリしないが慢性的につらい症状がある」といった方々にとって、漢方内科は新たな選択肢となり得ます。
本記事では、東京都の両国で漢方内科Q up クリニックの院長を務める私が「漢方内科とは何か」を初心者向けにわかりやすく解説し、基本的な特徴からメリットや注意点、具体的な治療法や流れ、受診のポイントまで網羅的にご紹介します。
これを読めば、漢方内科についての基礎知識が深まり、自分に漢方内科が必要かどうかを見極める助けになるはずです。
漢方内科では、一人ひとりの体質や症状に合わせたオーダーメイドの治療が行われるため、一般的な内科でお悩みが解決しない人にはかなりおすすめです。
漢方内科とは何か?

中医学から日本独自に発展した医学
漢方内科は、中国で発達した伝統医学(中医学)をベースに、日本で独自の発展を遂げた医学的分野です。
中医学は、紀元前の古代中国に起源を持ち、その基礎理論は「陰陽五行説」や「気・血・水」のバランス、そして自然界との調和を重視しています。
こうした思想は東アジア一帯に伝播し、日本では奈良・平安時代から渡来した中国医学をもとに独自の研鑽が進められました。
室町・江戸時代になると、朝廷や幕府に仕える医師たちや、町医者が漢方を多様し、日本人の体質や風土に合った処方へと洗練されていきます。
しかし、明治以降、西洋医学が急速に普及し、伝統医療である漢方は一時衰退傾向に。
戦後、漢方の再評価が進む中で、今日では西洋医学の補完的存在として再び注目を集め、病院内科・専門クリニックに「漢方内科」という診療科名が掲げられるようになっています。
漢方内科の基本的な考え方
漢方内科は「東洋医学」の一部で、自然の力を利用して体と心のバランスを整えることを重視します。
患者一人ひとりの体質や症状を総合的に判断し「証」と呼ばれる個々の状態に基づいて、生活背景、季節や気候まで考慮して治療・処方を行います。
そのため、特定の症状に対して万人に同じ治療をしたり、同じ漢方薬を処方するわけではありません。
西洋医学との違い
西洋医学は、科学的エビデンス、臓器別の疾患モデル、即効性のある治療法に重きを置きます。
病気の原因を特定し、西洋薬を用いて症状を直接的に治療するという流れです。
漢方内科では「身体全体のバランス」を整えるアプローチを重視します。
漢方薬は、自然の植物や鉱物を使って作られ、個々の患者に合わせてオーダーメイドで処方されます。
また、日常生活の改善や食事指導も治療の一環とされ、病気の予防や健康維持にも力を入れています。
漢方内科は、慢性的な症状や西洋医学では解決が難しいとされる問題にも効果的とされ、多くの人々に支持されています。
「漢方内科とは何か?」を端的に言えば、西洋医学と東洋医学の橋渡しを担い、患者個々のニーズに合わせたケアを提供する専門領域なのです。
漢方内科で診療する主な症状・疾患例

大きく分けて3つです。
- 慢性的な疲労・ストレス
- 女性特有のお悩み
- アレルギーや消化器系不調など
それぞれ詳しくご紹介します。
①慢性的な疲労・ストレス
長時間労働や人間関係、生活リズムの乱れなど、慢性疲労やストレスを訴える人が増えています。
検査数値上は正常でも、倦怠感、睡眠の質の低下、イライラ感など、不定愁訴に悩まされるケースが後を絶ちません。
漠然とした不調を「気血水」の乱れとして捉え、改善を図る治療が行われます。
たとえば、下記のようなお悩みの改善が期待できます。
- うつ病
- 不眠症
- 耳鳴り
- めまい
- 自律神経の乱れ
- 頭痛
- パニック障害
- 疲れやすい
- やる気が出ない
- 活力が出ない
など
②女性特有のお悩み
女性のなかには、手足の先がいつも冷たく、体温調節がうまくいかない「冷え性」に悩む方が少なくありません。
さらに、更年期障害によるホットフラッシュ、頭痛、めまい、情緒不安定など、多彩な症状も現れがちです。
西洋医学ではホルモン療法や鎮痛薬などが用いられますが、漢方内科では個々人の体質に合わせた漢方薬を処方し、内側から体質を改善していきます。
このアプローチは、長期的な視点で身体を「温め」「巡らせる」ことで、更年期特有の不調を和らげるとともに、今後の健康基盤を整える効果も期待できます。
たとえば、下記のようなお悩みの改善が期待できます。
- 冷え性
- 更年期障害
- めまい
- 頭痛
- 情緒不安定
- PMS
- むくみ
など
③アレルギーや消化器系不調など
アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、慢性的な下痢・便秘など、生活の質を損なう症状にも漢方は有効な場合があります。
たとえば、慢性的な胃もたれや腹部膨満感がある患者に対しては、消化機能を高め、腸内環境を整える生薬を処方することが多いです。
こうした処方は、直接的な症状緩和だけでなく、免疫バランスの改善や長期的な健康維持に寄与すると考えられています。
たとえば、下記のようなお悩みの改善が期待できます。
- アレルギー性鼻炎
- アトピー性皮膚炎
- 下痢
- 便秘
- 蕁麻疹
- 慢性的な肌のかゆみ
- ニキビ
- 肥満
- 胃もたれ
など
漢方内科で解決できる悩みは幅広い
漢方内科では、患者一人ひとりの「体質」を見極め、自然由来の「漢方薬」を用いて、長期的な健康改善を目指します。
特に慢性的な症状に対しては、身体全体の調和を取り戻すことで、根本的な改善を図ることが期待されます。
西洋医学とは異なり、症状だけでなく「生活習慣」や「食事」なども考慮し、総合的なアプローチをとるのが特徴的です。
漢方内科を訪れることで、心身のバランスを整え、より健康的な生活を送るためのサポートを受けることができます。
漢方内科を受診するメリット

- 個々の体質に合わせたオーダーメイド治療
- 慢性症状への根本的アプローチ
- 副作用リスクが低い
- 西洋医学と併用OK
- 心理的サポートと総合的ケアの提供
わかりやすく解説します。
メリット①:個々の体質に合わせたオーダーメイド治療
漢方内科の最大の特徴は、一人ひとりにカスタマイズされたオーダーメイド治療です。
慢性症状や不定愁訴は、一概に同じ原因で起きているわけではありません。
そのため、標準的な薬物治療では効果が出にくいケースも存在します。
漢方内科では、患者ごとに異なる要因を踏まえたアプローチが可能であり、よりパーソナルなケアが期待できます。
メリット②:慢性症状への根本的アプローチ
長く続く疲労感や原因不明の不定愁訴など、西洋医学で改善しにくい症状に対しても、漢方独自の理論で体質から改善を目指します。
即効性ではなく、じっくりと身体の土台を整えることで、根本的な健康回復を目指せます。
メリット③:副作用リスクが低い
漢方薬は自然由来の生薬を基本材料としており、その多くは比較的穏やかな効き方をします。
もちろん全く副作用がないわけではありませんが、西洋薬に比べると副作用のリスクは比較的低いとされています。
また、長い伝統に裏打ちされた安全性の蓄積があることも安心材料です。
長期間服用しやすく、体への負担が軽減できるため、安心して治療を続けることが可能です。
メリット④:西洋医学と併用OK
必要に応じて西洋医学と併用することで、より効果的な治療戦略が立てられます。
たとえば、急性期は西洋薬で症状を抑えつつ、漢方で慢性的な不調の根本原因を整えるなど、柔軟な組み合わせが可能です。
メリット⑤:心理的サポートと総合的ケアの提供
詳細な問診や丁寧なカウンセリングを通じて、患者の生活習慣や精神的な状態も考慮した総合的なケアが行われます
心身のバランス回復を目指すことで、単なる疾患治療を超えた「健康観」の醸成につながります。
漢方内科を受診する際の注意点やデメリット

- 即効性には限界がある
- 医師への情報提供の重要性
- 費用や保険適用範囲の確認が必要
注意点①:即効性には限界がある
漢方治療は、じっくりと体質を改善していくアプローチが主体です。
そのため、痛み止めや抗生物質のような速効的な効果を期待すると、物足りなく感じる場合があります。
効果を実感するまでには、ある程度の期間が必要です。
注意点②:医師への情報提供の重要性
既に服用している西洋薬やサプリメント、持病やアレルギーがある場合は、必ず医師に伝えましょう。
漢方薬は自然由来とはいえ、別の薬との相互作用が起こる可能性はゼロではありません。
正確な情報提供が、より安全で効果的な治療につながります。
注意点③:費用や保険適用範囲の確認が必要
保険が適用される処方もあれば、自由診療の場合もあります。
事前にクリニックのホームページや電話で、費用や保険適用の有無を確認しましょう。
特に、クリニックのホームページで費用が記載されていない場合は要注意です。
漢方内科の診察・治療の流れ

漢方内科での治療は、個々の体質や症状に応じたオーダーメイドのアプローチを取ることが特徴的。
なお、漢方治療は、まず患者の全体的な健康状態を評価することから始まります。
具体的には下記の流れで進めるクリニックがほとんどです。
- 問診(カウンセリング)
- 体質・証(しょう)の判断
- 漢方薬の処方
各ステップごとに詳しく解説します。
①問診(カウンセリング)
漢方内科の受診時には、まず医師が丁寧な問診を行います。
どのような症状がいつから続いているのか、食生活や睡眠パターン、職場や家庭環境など、患者の生活背景に踏み込むことで、身体の不調を引き起こす根本的な要因を探ります。
また、舌の色や苔の状態、脈拍、腹部の触診など、独特の診察手法を組み合わせ、「証」と呼ばれる患者個人の体質傾向を把握します。
②体質・証(しょう)の判断
漢方内科では、患者の「証」を見極めることが非常に重要です。
証とは、患者が示す身体的・精神的な特徴を総合的に捉えたものです。
たとえば・・・
- 「気虚」(エネルギー不足)
- 「血虚」(血の不足)
- 「瘀血」(血の巡りが悪い状態)
- 「湿熱」(湿りと熱が溜まっている状態)
など、さまざまなパターンがあります。
証の判断により、同じ「冷え性」に悩む患者でも、根本原因が「血虚」によるものなのか、「気虚」によるものなのかで処方される漢方薬は変わってきます。
また、クリニックによっては、生活習慣の改善も併せて指導されることもあります。
③漢方薬の処方
問診や証の判断を経て、医師が適切な漢方薬を選びます。
漢方薬は数十種類以上の生薬を組み合わせた複合処方が多く、そのバランスによって薬効が決まります。
例えば、冷え性やストレスによる不調には、「桂枝茯苓丸」や「半夏厚朴湯」などの漢方薬が用いられることがあります。
既成の漢方製剤(ツムラなどのエキス剤)が処方されるケースもあれば、煎じ薬として生薬を調合するケースもあります。
服用のポイントは、決められた時間帯や用法を守ること、長期間の服用で徐々に体質改善を目指すことです。
西洋薬と比べて即効性はやや劣る場合もありますが、継続することで根本的な改善が望めます。
漢方治療に必要な目安期間

治療期間は、症状の重さや体質によりますが、一般的に数週間から数ヶ月を要することが多いです。
漢方治療は、即効性よりも体質改善を重視し、根本的な健康の向上を目指します。
西洋医学と異なり、症状だけでなく、全身のバランスを整えることを目的としています。
このため、漢方内科では、患者一人ひとりに合わせた「中長期的な治療計画」が立てられます。
漢方内科に関するよくあるご質問(FAQ)

まとめ
「漢方内科とは何か」という基本的な疑問に応えるべく、その定義や起源、西洋医学との違い、代表的な症状への対応例、メリットや注意点、受診時の流れ、クリニック選びのポイントなど、幅広いトピックを網羅しました。
漢方内科は、長い歴史と豊富な理論的背景を持ち、従来の西洋医学で改善しにくい慢性的な不調や体質改善に強みを発揮します。
特に、対症療法ではなく、患者一人ひとりに合わせた「根治的なアプローチ」を期待できる点は、大きな魅力です。
もちろん、漢方治療が全ての人にとって万能な解決策ではありませんが、選択肢の一つとして知っておく価値は十分にあります。
自分自身の体質やライフスタイル、健康状態を見直し、専門性の高いクリニックを選ぶことで、より良い健康状態を目指すことができるでしょう。
「漢方内科とは何?」という問いかけに対しての理解が深まった今、専門家の門を叩き、自分に合った治療の道を探ってみてはいかがでしょうか。